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マルタ・サギーは探偵ですか? 

マルタ・サギーは探偵ですか?
著者: 野梨原花南
出版社: 富士見書房
ページ数: 206p
発行年月: 2003年12月

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あらすじ
彼の名前はマルタ・サギー。本当は少し違うけれど、オスタスに来てからはそう呼ばれている。職業は『名探偵』。けれど推理はしないし、できない。マルタにあるのは“事件を強制的に終結”させる力だけ。彼がその力を行使すると“世界の法則さえ捻じ曲げて事態が解決”してしまうのだ。「だってどんな世界でも働かなきゃ、生きていけないし。僕にできるのは『名探偵』だけだし」完璧な探偵であり、同時に全く探偵でないマルタ・サギーは、如何にして『名探偵』になったのか?彼の“秘匿されている”過去が、そして宿命の好敵手、怪盗ドクトル・バーチとの出会いの顛末が、今初めて明らかになる!マルタは、へらりと笑う。「不安なのは、どこでだって一緒だ。だから新しい世界で、僕はどんな僕になろうか考えたのさ」。
by:BOOKsデータベース

ああ、うれしい。
ようやくやっと野梨原さんの作品を語れる

今までずっとコバルト文庫から出版されてきた作品を追いかけてきてましたが、「富士見ミステリー文庫」なんてところでも書いているとは今までずっと知らなかった。
(ネットで新刊検索しなかったら、そのまま一生知らなかったのだろう。巻末に他社のも宣伝してくれればいいのに)

そんなこたーともかく。
肝心の本編のほうですが。

―――うーん。
端的に言って、2003年(書かれた年)にハリポタとシャーロック・ホームズを混ぜて煮始めて、まだ指を突っ込んでも平気な熱さの澄まし汁をすくった感じ?
何よりまだ作者がこの世界観を書き慣れていない感がありありなので、読んでいるコッチもちょいとばかし感情移入してみる隙間が無い。

そのまま終盤まで突き進んでしまったものだから、いきおいで今現在手に入る7冊を全部揃えてしまったのはいいが、どうするか?
と悩んでいたところに、私を野梨原さんから離れられなくしている絶妙のテンションが。

「人を殺すことはなんで悪いか。命の重さに代わりはなくて、喰ってンだからおなじだろうとか、戦争がどうのとか、うるせぇな、悪いと思うから悪いんだ! 人の生命、安全、財産は守られるべきであって、誰かが勝手に攫っていいもんじゃない。生きる価値があるとかねぇとか、神様でもねぇのに手前が決めんな、お前そんなに偉いのか!?」

くーッ。
大好き
出てくるキャラが大上段に構えてこーゆーセリフを正面切って決めてくれる。
これを言ってる「鷺井丸太」は、正直言って人生ちっとも前向きに生きるつもりの無い高校生で、引きこもりがちなダメ男なんだけども、運命のイタズラに流されて「マルタ・サギー」と名乗ることになって以来、すこしずつ面倒くさい世間に目を向けて、前向きに成長してゆくのだと思われる。
んで、本人が衆目の面前でこんなセリフを決めてしまったものだから、
(そして、(仕組まれていたとはいえ)きっちり事件も解決しちゃったわけだから)
嫌でも成長してゆくしかないんでしょう。
次の巻を読むのが愉しみです
(だってまだ表紙の二人は正式には対面してないわけだし)

名探偵がいるところには怪盗がいる。
その役回りのドクトル・バーチが、いにしえの「ダイアモンド伯爵」を彷彿とさせてくれるので、
伯爵のFanで、まだまだもっと伯爵の活躍が読み足りなかったFanからしてみれば、なおのこと彼女の活躍が愉しみです

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マルタ・サギーは探偵ですか? A collection of s.  

マルタ・サギーは探偵ですか?(A collection of)
著者: 野梨原花南
出版社: 富士見書房
ページ数: 222p
発行年月: 2004年07月

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あらすじ
異世界・オスタスで、名探偵事務所を営むマルタ・サギー。駆け落ち事件に怪盗騒ぎ――解けない謎はないマルタにないもの、それは生活能力だった。だから働き者の助手・リッツには、ゴハンの苦労をさせるし、好敵手関係のはずの怪盗ドクトル・バーチには、生活の心配されちゃうし……。

書き下ろし長編1冊目の前後に雑誌で書かれた短編+書き下ろし1本を含めた短編集です。

■ 第一章(その1):探偵M氏に助手はどうです?
探偵助手リッツ・スミス登場。
探偵(18才)にして助手(15才)。
ワケありで世話焼きなら、年上のほうが好みかな~というのが個人的感想。

■ 第一章(その2):ドクトル・バーチはそのころ何を?
第一章のドクトル・バーチ視点。
この頃から、名探偵時のマルタのキャラに変化が。
自分の変装に、マルタが微妙な反応をしてみせるのに、後になって自分でヤキモチ焼いちゃうバーチが可愛い。

■ 第二章:マルタ・サギーの三日間
「ちょー」シリーズでもありましたね、記憶喪失モノ。
ひょんな事件で記憶を無くしてしまったマルタを、知らん顔して屋敷に匿うバーチ。
これがBLとかハーレクイン文庫だったりしたら、ものっそい耽美な展開に発展するのだろう設定を、いとも可愛く綺麗に自己中にハッピーに盛り上げるのが上手いのです。
やはりここでもひたすら可愛いバーチ。

■ 第三章:リッツ・スミスは十五歳
ほのぼの日常編。
なんだか「聖夜の贈り物」のエピソードを彷彿とさせられた。
ここらでこの短編集は「可愛いバーチの特集号」ではないのかと疑い始める。

■ 第四章:探偵M氏の迷宮入り事件
名犬:ジョゼフ犬登場。
日の高いうちは可愛いワンコ。
夜のあいだは可愛い女の子。
探せばジョゼフ犬がメインの同人誌(男性向け)山ほど発掘できるんじゃないでしょーか。
ずばりストーカーの範疇まで進歩を遂げているバーチ。
でもジャックの言葉じゃないけれども、このままあっさりマルタが振り向いてしまったら、なんかすぐにバーチのほうが飽きちゃいそうな気もしてきた。

■ 第五章:研究対象マルタ・サギー
エシ氏がキモカワイイ。
しかしクレイの描写が、書くたびごとに違うのはどうしたものか。
(髪の色だけでも栗色・濃い茶色・薄い茶色、瞳の色なら鳶色・灰色etc)

この一冊でバーチとジャックがけっこう好きになりました。
マルタはイマイチまだどういう人なのかわかんない。
バーチの言うように「純粋」というよりも、今はただの世間知らず。
彼のほしいものが全て手に入ったとき、そのすべてに慣れてしまったとき、それでも「純粋」で居続けられるのかが今は疑問。
とにかく1冊目に比べて格段に話のテンポが良いので、気になる方はこの巻から試し読みをしてみては?
(この巻を読んでOKなら、残りの巻を暇なく一気読みできることは請け合いです)

マルタ・サギーは探偵ですか? (2) 冬のダンス 

マルタ・サギーは探偵ですか?(2)
著者: 野梨原花南
出版社: 富士見書房
ページ数: 206p
発行年月: 2005年03月

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あらすじ
「わたくし、カード戦争委員会から参りました。―マルタ・サギーのフォローをするために」シェリー・オーウェンは微笑んでそう告げた。異世界・オスタスで、名探偵事務所を営む“完璧な探偵にして全く探偵でない”マルタ・サギー。あらゆる世界の法則を捻じ曲げる“名探偵”のカード使いである彼は、カード戦争から逃れられない。カード戦争は、誰が何のために始めたのか?世界の神秘に通じるその謎を巡って、ドクトル・バーチが属するフィランシェ教室もまた、動き出す。それはマルタの助手・リッツの過去へと続く、ある人物の登場をも意味していた―。全てを受け止め、マルタは笑う。「負い目があるとわかっているなら、それを打ち消さなくちゃいけない。僕だって、それくらいの事は解るようになったんだよ」新感覚カードバトル・ミステリー、新展開突入。

バーチ負傷。
ところでバーチの香りになってる杜松ですが、手元にあるジュニパーの香りだと松。
クナイプのワコルダー(杜松)も松っぽい山の香りで、別名:和白檀。
いっそブルガリのブラックとか似合いそうな感じがするのだけれども。
それより検索で見つけた杜松の樹というグリム童話がものすごく残酷で怖かった。
欧州の子供達は、こういうのを幼少時代から読んでいて、どうして一人で寝たりトイレに行けたりするのかが不思議だ。(←ただの怖がりι)

デアスミス登場。
個人的には、もっと悪者でもいいと思う。
できれば最後にクレイが彼を裏切るともっといい。

アテンダント:
川原由美子著「観葉少女」のなかの「メランコリィの花冠」を彷彿とさせられた。
リッツは「兄は自分すら躊躇なく殺してしまうでしょう」と達観してしまっているけれども、デアスミスはちょっと異常なくらいに弟のことが大切なんじゃないだろうかと予想しているんだが、さてどうなるか。

それにつけても、ますますジャックが好きになります。
バーチが愚弄されたといって、バーチに隠れて部下に指示を出すところなんかものすごく格好イイ。
ちょーシリーズも、よかったり~の魔女もいずれも脇役そっちのけで、主役がものすごくハッピーに終わってしまうので、ジャックにはぜひともに幸福になってもらいたいなあ。

ちなみに、この巻の終わりでリッツとジョゼフィーヌは「食事とお茶」をしていたはずなのに、後の巻ではなぜだか「お茶」だけしていたことに変更されている。
野梨原さんはけっこうあとがきで著者校正のことを取り上げているけれども、その割りにけっこう吃驚しちゃう間違いが多いので不思議なお方だ。

マルタ・サギーは探偵ですか? a collection of s.2 

マルタ・サギーは探偵ですか?(A collection of)
著者: 野梨原花南
出版社: 富士見書房
ページ数: 270p
発行年月: 2006年04月

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あらすじ
異世界の都市・オスタスで活躍中の“名探偵”マルタ・サギーと、その好敵手たる怪盗ドクトル・バーチ。二人に関わる人々の苦労は絶えない。マルタの助手兼名探偵事務所を取り仕切る、リッツ・スミス少年、曰く。「というか、探偵を名乗る前に人間としてもっとしっかりしろ、という感じがします。マルタの場合」バーチの執事兼運転手兼その他もろもろのゴブリンのジャック、曰く。「ドクトルは、詰が甘いところがあるんです。だから、あの盆暗探偵に関わると碌なことがない」それでも二人は、惹かれ合うように対決を繰り返し、異口同音にこう微笑むのだ。「だって、あの怪盗(もしくは探偵)は、なんとも―楽しいじゃないか?」“完璧な探偵にして全く探偵ではない”名探偵と、美学を貫く怪盗。そして、彼らを巡る人々の奇妙で優しい関係を綴る、短編集第2弾。

短編集の2.
長編では進みづらいエピソードと人物の心情をあらゆる角度から
切り取って見られるので良いですね。

■ 第一章:さよなら、私のマリアンナ
よくあとがきに「冷や飯に水をぶっ掛けて食べる」とか書いてらっしゃるクセに、野梨原さんの話にはよく美味しそうな食事のシーンが出てくる。
この話を読むと、芦屋とかのケーキ屋に出掛けてしまいたくなる。

■ 第二章:ドクトル・バーチに愛の手を
ジャックの出番が多いと特に喜んでしまうFan。
しかもエシ氏まで再登場で二度美味しい。
(緑色の体液を~のくだりでは、なんだかハリポタのスネイプ教授ご臨終のシーンを思い出してしまったけれども。)
しかしシロアリ駆除に有効なのはハッカ油とか青森ひばとか色々あるみたいなんですが、
もっぱら使用されているのは「毒物劇物取締法」指定の猛毒。
エシ氏以外の人間も大丈夫だったんか?と超細かいことを気にしてしまった。
エシ&リーサーは学生時代のライバルで~とかいう設定だったらますますハリポタみたいになっちゃうけども、可愛いな~好きだな~。
ジャックの冷静な突っ込みぶりが惚れ惚れする

■ 第三章:紅白珊瑚礁
「添乗員付きワクワク無人島ツアー」編。
それまで乙女な壊れっぷりが可愛いバーチが、一転して頼りになる知識満載男前。
というよりも、根が度外れに乙女なタイプゆえ、ふたりっきりになるほどにガードを固めてしまうため、進展のしようもあったもんじゃない。
マルタも後で「バーチが女? 気持ち悪い」とか言ってるし。(ひどい男だ)
なんかこのへんの関係が「キャッツ・アイ」を彷彿とさせるな~としみじみ思った。

■ 第四章:探偵捕わる。
ジャック格好イイ。
(それしかあんまり言うことないけどイイ話)
しかしけっこう何でも有りな名探偵のカード。
ひょっとしなくても、リッツ・スミスのアテンダントも名探偵のカードがあれば
あっさり解決してしまったりして? と思ってみたりして。

■ 第五章:ニセ探偵のセレナーデ
「恋でもしてらっしゃるの? 私に」
このくだりをもっと突っ込んで書いてほしかった。
冷静なそぶりで、ぜったいあとで動揺してしまったのだろうバーチ。
思わぬところで一歩踏み出すマルタのことは好きだな~。
(なにしろ18の男なんだもん。もっといろいろあってもいいだろう)
と思っていたら、思いがけなくマルタがマリアンナをデートに誘った。
真っ赤になるマリアンナ as バーチが可愛い。
ニセ探偵M as ノードラのキャラもけっこう好きかも。

野梨原さんの書かれる長編も好きだけど、短編はことさら勢いがあって読んでいて愉しい。
できれば「ジャックのなんでもない一日」とか読んでみたいな。

マルタ・サギーは探偵ですか?〈3〉 ニッポンのドクトル・バーチ  

マルタ・サギーは探偵ですか?(3)
著者: 野梨原花南
出版社: 富士見書房
ページ数: 206p
発行年月: 2006年08月

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あらすじ
そこは馴染み深い自分の家だった。日本の、蓑崎の―異世界・オスタスに飛ばされてから何度かは、帰りたいと思った気がする場所。オスタスでは少年探偵マルタ・サギーであり、日本では元男子高校生の鷺井丸太は、呆然と呟く。「っていうか、なんで戻ってるの?」「まあ、ともかく君。何か私に振る舞い給え」「…しかも、バーチまで一緒だし…」始まりは、探偵助手リッツが昏睡状態に陥ったことだった。謎のカード使いの仕業だとわかった時、マルタも好敵手たるドクトル・バーチと共に、カードの力の発動に巻き込まれ―気が付けば日本に戻っていた。ずっと、独りぼっちだった生まれ故郷に。謎のカード使いの目的は一体何なのか?オスタスでのことが嘘みたいな“元いた世界”を前に途方にくれるマルタに、バーチは悠然と微笑みかける。「どこに居たって“世界の謎”を解くのは名探偵の役割だろう?―おそれるな。自信を持て」“自分の居るべき世界”の意味に迫る、異世界ハイブリッド・ミステリー第3弾。

クレイの登場の仕方があざとい。
クレイはいずれ超ヤなやり方で、デアスミスを裏切るといい。
またマルタが「処女じゃない」とか気になるセリフを言ってますが、てっきり後々のシーンの伏線かと思っていたら、そうでもなかった。(まだ出てきてないだけか?)
吸血鬼の伯爵お父様、けっこう好き。

で、日本の蓑崎で買い物するバーチ。
クレジットカードで買い物するときのサインとかどうしてたんだろうか?
(暗証番号を教えたのか? 怪盗に?)
チョコレートサンデーを食べるデアスミス。
クレイの用意した紅茶とパンケーキを食べたことのあるデアスミス。
本編なんだけど、なんだか短編集みたいな内容が盛りだくさん。

それはともかく、後にマルタがリッツを迎えに行くシーンが印象的だった。
「僕を見捨てないでよ、リッツ」ってズルイよな~。
この時点でのマルタは、まだどこか自分本位で好きじゃないんだけど。
それよりカード委員会のやり方が容赦なくて気持ちが悪い。
(プレイヤーの記憶も消してしまったらいいのに。)

マルタ・サギーは探偵ですか?〈4〉 恋の季節  

マルタ・サギーは探偵ですか?(4)
著者: 野梨原花南
出版社: 富士見書房
ページ数: 205p
発行年月: 2006年12月

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あらすじ
『バーチの目的はドルーシア銀行の金塊。アラン・レイ高校からの侵入が考えられる』。始まりは匿名の投書だった。真偽を確かめるべく、助手のリッツと一緒にアラン・レイ高校へ潜入する名探偵マルタ・サギー。しかし、彼は悩んでいた。臨時講師の依頼を受けて高校に来ていたマリアンナ・ディルベルタさん。彼女が話す姿を見ていると、息も上手くできない。口から心臓飛び出しそうだし。「これ、恋なのかな?」一方、怪盗ドクトル・バーチの本来の姿であるマリアンナ・ディルベルタは、上機嫌だった。あの少年探偵は、どうやらマリアンナへの好意を自覚し始めたらしい。「いやだなぁ、ときめくじゃないか」。そして迎える“ドルーシア銀行襲撃予告”の日。恋を感じる2人の気持ちとは関係なく、“事件”は起こり、カード戦争の状況も変化する―。異世界ハイブリッド・ミストリー、恋の甘さと苦さを味わう第4弾。

「やっぱりデアスミスは弟のことが大好きだ」疑惑の深まる高校編。
ところで、このなかに出てくるアンさんとジャックの会話がものすごく好き。
いいなー、こーゆーシーンがもっと読みたいなー。

しかし、マルタがバーチにマリアンナについて相談をするシーン。
前巻の第七章で思いっきりマリアンナさんのことをふたりで話してるクセに、ここではいきなりマルタがバーチに「知り合いなの!?」っておいおい。ι
でも不安定なマルタをバーチが知らん顔して、言葉で恋の方向へ誘導していくのは、乙女っぷり全開って感じで好きー。

とにかく総じてテンポが良くて爽快で、読み応えのあった一冊。
ラストがまた清々しくて、こういう野梨原さんの話は本当に好きだなーと実感していたのもつかのま。

私はまだ一気読みしているからマシだったけれども、リアルタイムで追いかけていた読者さんにとっては、すっごい残酷な七ヶ月(次巻発行までの期間)だったのじゃないですか?


「そーくるか―――ッ?!」


思わず心臓が止まってしまったラスト。
(手が震えた)

マルタ・サギーは探偵ですか? (5) 探偵の堕天 

マルタ・サギーは探偵ですか?(5)
著者: 野梨原花南
出版社: 富士見書房
ページ数: 219p
発行年月: 2007年07月

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あらすじ
25歳の鷺井丸太は森川調査事務所で働いている。異世界・オスタスの名探偵マルタ・サギーが、生まれ故郷の蓑崎に強制送還され、ただの鷺井丸太に戻ってから―7年が経っていた。丸太は、もう一度オスタスへ行きたかった。だから手がかりを探して、調査事務所で働くことにしたのだ。でも、時間が経っても、何もつかめない。丸太は思う。オスタスに行く前より、蓑崎は嫌いじゃない。知り合いがいて、毎日の暮らしに困ることもなくて。だけど、僕の心は異世界に囚われたままだ。マリアンナさんがいる、あのオスタスに。そんな時、丸太の務める調査事務所に行方不明の妹・渚を捜して欲しいという依頼があった。渚―その名前を聞いて、丸太の心臓は強く脈打った。それは自分がカード戦争にエントリーした時、出会ったヤマンバコギャルと同じ名前だったから。この依頼は、オスタスへの手がかりの一端となりうるのか?鷺井丸太と世界の関係が再び変わり行く、ハイブリッド・ミステリー長編第5弾。

もうね、巻頭カラーの丸太が土下座しているシーンと、モノクロの心象風景だけでも頭の中がカーッと熱くなってしまった。
あんまりショックで書いてある文章が脳味噌で理解できない。
だから反則だとは思ったけど、ラストの展開を確認してから「ああ、そうか」と落ち着いて、それからようやく読み始めることができたくらい。
(後に前から順当に読み進むべきだったと反省したけれども)

ずっと野梨原さんの書かれるファンタジーが好きだったので、あえてそれ以外のジャンルには手を出していなかったんですが、やっぱり他のも全部読んでみようかなと思うほどに現代が舞台の話も面白いと思った。
森川さんのキャラクターが味があって好きだなー。
才谷さんに次第に懐いていく丸太の描写がすごく好き。

前々から思っていることなんだけれども、人がとてつもなく弱く疲れ果ててしまっていて、その人に接する周りの人の態度が、どうしてああもわざとらしくなく自然に書けるのかと不思議になってしまう。
あんまり辛くて、泣く元気も残ってないくらいに疲れてて、いっそのこと自分の殻の中に閉じ篭ってしまったほうが簡単なのに、そんな自分に接してくれる周りの人の存在がうれしくて、ごくごく素直にそのうれしい気持ちのままに心をほぐしてしまえる。
そうした一連の心理状態を読んでいるだけで、コッチのほうまで安心してしまって「なんかもー考えるのもかったるいンだけどー、でも羨ましいからがんばるかー」と安易に前向きに考えられるような気がしてしまうから好きなんですよね。
ああ、この人は本当にドン底まで自分を追い込んだことがある人だー、と意味もなく確信してしまえるので、無いものねだりの羨望から勇気を手に入れられてしまうのです。

そうした周りの人の存在で、否応なく着実に成長を遂げていった丸太。
きっとこの物語は丸太の成長を追うストーリーなんだろうと思っていたけれども、まさかにもこういう形で丸太に成長を迫られるとは思っていなかった。
(最後に夢オチで迎えるバッド・エンディングだけは嫌だなーと怖れていたけれども。ある意味それよりずっとこの展開のほうが残酷だった。)

意識的な成長と引き換えに、最終的に無いものにされてしまった物理的な七年間。
本文中には出てこないけれども、オスタスの人々にとっての七年間も奪われてしまったわけで。
相変わらずマルタは自己中でけっこう嫌なヤツなんだけれども、今の彼の利己に対する率直さには「言いわけ」が含まれていないせいか、以前よりも格段に好きになってしまっていた。
できれば森川さんや才谷さんと共に過ごす一生も見てみたかった気がするけれども。
なんだか次巻が最終巻でも納得できてしまいそうな勢いです。
ものっそい久しぶりに、読んでいる最中息を止めてしまうような話を読みました。
(心臓に悪かったけれども、面白かったー。)

ちなみに、短編集の2、ニッポンのドクトル・バーチ、恋の季節と4ヶ月に1冊のペースで刊行されていますが、この巻が出るまで7ヶ月。
次の巻がいったいいつ頃出るのかさっぱりわかりませんが、ものっそい次の巻を読むのが待ち遠しいです。