FC2ブログ
【2019年11月】 10月≪ 123456789101112131415161718192021222324252627282930≫12月

マルタ・サギーは探偵ですか? (5) 探偵の堕天 

マルタ・サギーは探偵ですか?(5)
著者: 野梨原花南
出版社: 富士見書房
ページ数: 219p
発行年月: 2007年07月

本の詳細を確認する

あらすじ
25歳の鷺井丸太は森川調査事務所で働いている。異世界・オスタスの名探偵マルタ・サギーが、生まれ故郷の蓑崎に強制送還され、ただの鷺井丸太に戻ってから―7年が経っていた。丸太は、もう一度オスタスへ行きたかった。だから手がかりを探して、調査事務所で働くことにしたのだ。でも、時間が経っても、何もつかめない。丸太は思う。オスタスに行く前より、蓑崎は嫌いじゃない。知り合いがいて、毎日の暮らしに困ることもなくて。だけど、僕の心は異世界に囚われたままだ。マリアンナさんがいる、あのオスタスに。そんな時、丸太の務める調査事務所に行方不明の妹・渚を捜して欲しいという依頼があった。渚―その名前を聞いて、丸太の心臓は強く脈打った。それは自分がカード戦争にエントリーした時、出会ったヤマンバコギャルと同じ名前だったから。この依頼は、オスタスへの手がかりの一端となりうるのか?鷺井丸太と世界の関係が再び変わり行く、ハイブリッド・ミステリー長編第5弾。

もうね、巻頭カラーの丸太が土下座しているシーンと、モノクロの心象風景だけでも頭の中がカーッと熱くなってしまった。
あんまりショックで書いてある文章が脳味噌で理解できない。
だから反則だとは思ったけど、ラストの展開を確認してから「ああ、そうか」と落ち着いて、それからようやく読み始めることができたくらい。
(後に前から順当に読み進むべきだったと反省したけれども)

ずっと野梨原さんの書かれるファンタジーが好きだったので、あえてそれ以外のジャンルには手を出していなかったんですが、やっぱり他のも全部読んでみようかなと思うほどに現代が舞台の話も面白いと思った。
森川さんのキャラクターが味があって好きだなー。
才谷さんに次第に懐いていく丸太の描写がすごく好き。

前々から思っていることなんだけれども、人がとてつもなく弱く疲れ果ててしまっていて、その人に接する周りの人の態度が、どうしてああもわざとらしくなく自然に書けるのかと不思議になってしまう。
あんまり辛くて、泣く元気も残ってないくらいに疲れてて、いっそのこと自分の殻の中に閉じ篭ってしまったほうが簡単なのに、そんな自分に接してくれる周りの人の存在がうれしくて、ごくごく素直にそのうれしい気持ちのままに心をほぐしてしまえる。
そうした一連の心理状態を読んでいるだけで、コッチのほうまで安心してしまって「なんかもー考えるのもかったるいンだけどー、でも羨ましいからがんばるかー」と安易に前向きに考えられるような気がしてしまうから好きなんですよね。
ああ、この人は本当にドン底まで自分を追い込んだことがある人だー、と意味もなく確信してしまえるので、無いものねだりの羨望から勇気を手に入れられてしまうのです。

そうした周りの人の存在で、否応なく着実に成長を遂げていった丸太。
きっとこの物語は丸太の成長を追うストーリーなんだろうと思っていたけれども、まさかにもこういう形で丸太に成長を迫られるとは思っていなかった。
(最後に夢オチで迎えるバッド・エンディングだけは嫌だなーと怖れていたけれども。ある意味それよりずっとこの展開のほうが残酷だった。)

意識的な成長と引き換えに、最終的に無いものにされてしまった物理的な七年間。
本文中には出てこないけれども、オスタスの人々にとっての七年間も奪われてしまったわけで。
相変わらずマルタは自己中でけっこう嫌なヤツなんだけれども、今の彼の利己に対する率直さには「言いわけ」が含まれていないせいか、以前よりも格段に好きになってしまっていた。
できれば森川さんや才谷さんと共に過ごす一生も見てみたかった気がするけれども。
なんだか次巻が最終巻でも納得できてしまいそうな勢いです。
ものっそい久しぶりに、読んでいる最中息を止めてしまうような話を読みました。
(心臓に悪かったけれども、面白かったー。)

ちなみに、短編集の2、ニッポンのドクトル・バーチ、恋の季節と4ヶ月に1冊のペースで刊行されていますが、この巻が出るまで7ヶ月。
次の巻がいったいいつ頃出るのかさっぱりわかりませんが、ものっそい次の巻を読むのが待ち遠しいです。

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://ronsard3.blog29.fc2.com/tb.php/14-1c40bb77