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夏の風物詩 (1) 

突然連載初めて見ました。
(細かい設定などはおいおい)


携帯やmacな方はコチラから。

それ以外の方は、下からどうぞ。






【 Scene: Lelouch 】


「おはよう、ルルーシュ」
 本気で掴んだら、すぐにも折れてしまいそうな細い手足。
 まるきり、それを見せ付けるようにして、シャワーを浴びた直後の身体を火照らせながら戻ってきたC.C.は、濡れた髪もそのままに、ゴロリと怠惰にソファに転がった。
 いつものようにパソコンデスクに向かって、作戦の準備を進めていたルルーシュは、眉間に濃い縦皺を刻み込むと、無言で嫌そうにC.C.の姿を睨め付けた。
 ふあぁと呑気にアクビを洩らしながら、愛しげに腕の中のチーズくんにチュ、チュッと朝の挨拶をしていたC.C.は、しばらくして、初めて気づいた素振りを装って、ふふっと悪戯な流し目でほくそ笑む。
「何をそんなにジロジロ眺めているんだ、ルルーシュ?」
 ルルーシュの視線を意識しながら、C.C.は仰向きの状態から、ゴロリと腹ばいに寝返りを打ちなおすと、クスクス愉しげに笑い声を上げながら、腕の中のチーズくんに頬ずりをして見せている。
 遠目に眺めても、ほのかな薔薇色に上気している肢体の至るところが、まだかなりの水滴や汗のしずくで濡れているのがわかってしまうのは、窓から差し込む陽光にキラリと反射したせいだ。
 実際の年齢を感じさせない瑞々しさで輝いている玉の素肌は、濡れているせいで余計に透明感を増していて。中でも特にルルーシュの目に馴染みの良い淡いエメラルド・グリーンの髪の美しさが、ひときわ際立っているように感じてしまう。
 たしかに、見た目だけを問題にするならば、極上の部類に入ってしまう美少女なのである。
 だが、しかし、見た目などというものが、この女の場合いったい何の問題になろうか?
 昼にも近いこの時間に、ようやく寝床から抜け出したばかりだというのに、たわけた女は、それから数分後には、かすかな寝息を洩らし始めていた。
 おまえは一体どこまで無精者なんだと、ルルーシュは、しみじみ溜息を吐き出しながら、ベッドの上からタオルケットを取って戻ってくると、ついでに濡れた身体を拭ってやりながら、肩の上まで丁寧にタオルケットを着せかけた。
 季節は、夏。
 ただでさえ、シャワーを浴びたばかりで暑いのだろう。
 そんなことくらい、重々承知している。
 ――だが、しかし。

「――…水着だと、まだしもマシなんだがな……」

 ――この、拘束衣のインナーというのは、どうにも……。

 いくらルルーシュが、こっちの方面には淡白な気質であるとはいえ、多少は目のやり場に困ってしまう。
 むしろ、ルルーシュのシャツを勝手に着ている時のほうがマシだった。
 アレなら見た感じ、あんまり身体のラインが協調される心配は無い。
 しかし、おそらく着脱する際の効率を最優先に考えてあるのだろう、C.C.が普段着にしている拘束衣のインナーは、一部の隙なく女の身体にぴったり張り付いていて。
 肉感的な身体の凹凸を、これ以上もなく強調して見せているものだから、タオルケットの上からでも何となく、腰のくびれている感じとか、尻の丸みなどが際立って見えてしまうのだ。

 ――いい加減、年かな、俺も。

 昔は、それこそC.C.が、裸同然の格好で目の前を歩き回っていようが、一向に気にする気にもならなかったはずなのに。
 最近は、本当に時々ではあるけれど、C.C.を単なる一人の女として意識してしまう場合がある。

 ――いい加減、年だな、俺も。

 うんざり溜息まじりに結論をつけると、ルルーシュはタオルを手に取り、濡れたC.C.の髪を拭い始めた。
 放っておいても、風邪など引かない体質であるのは、充分以上によく知っている。
 しかし、あいにくルルーシュのほうが、放っておけない体質なのだ。

 ――そもそも、このままではソファが濡れてしまう。

 我ながら、言い訳がましいセリフを内心で呟きながら、やってみれば結構愉しい作業に専念していると、しばらくしてコンコンとドアをノックする音が聞こえた。
 一瞬、このまま居留守を使ってやろうかと考えたが、そんなふうに感じた自分のほうに驚きを感じた。

 ――どうして俺が、居留守を使ってまで、C.C.の髪を拭ってやらなくてはいけない?

 どうやら気づかぬところで、相当魔女の毒牙に感化されているらしいな――と、うんざりしながら肩をすくめると、ルルーシュは渋々腰を上げた。
 だが、その場からまだ一歩も動き出さないうちから、勝手にドアが開けられたから驚いた。
「――C.C.、居る? あ、寝てる」
「スザクッ! おまえはまた……返事をするまで入ってくるなとッ! ――いや、それより今は、入ってくるなッ!」
「どうしてさ? あ、ひょっとして、ゴメン。お取り込み中だった?」
「バカかッ! そういうことではなくってだなッ!」
「――…ぅ、うンッ…もっ……るさァ…い…っ」
 寝ている頭の上で喧々囂々とやり合っているものだから、不機嫌そうに唸り声を上げたC.C.が、ゴロリと寝苦しそうに寝返りを打つ。
 ルルーシュがハッとした時には既に遅く、身体中に濡れた髪を色っぽく纏い付かせながら仰臥しているC.C.が、腹の下までタオルケットを蹴落としてしまっていた。

 ――この女は、またっっ!!

 ルルーシュも今まで気づいてなかったのだが、チューブトップのバストの部分を、涼むのが目的でしっかり上まで引き上げてないものだから、胸の谷間どころか、淡いピンクの乳首の輪郭が危ういところで覗いてしまいそうになっている。
 そんなものを、男の居る部屋で平気で見せ付けるな! とルルーシュは慌ててタオルケットを鷲掴むと、C.C.の肩口を巻き込むようにして強引に着せかけた。
「――…ねぇ、それって暑いんじゃないのかなァ?」
「うるさいっ。黙れっ!」
 おまえは、いったい何を残念そうに言っているのかと、思わずルルーシュが赤面しながら食ってかかると、よりにもよってこの無粋な親友は、C.C.の枕元にしゃがみ込んでくるなり、しみじみ寝顔を眺めた後で、ボソリと呟いた。
「こうしてみると、本当に『普通の女の子』なんだよねぇ…」
 普通の女だからといって、どうしてそんなにジロジロ眺める必要があるんだ? とルルーシュは激しくムッとしながら、そのままそそくさと腰を上げた。
「行くぞ、スザク。用があるから、呼びに来たんだろう?」
「うん、まァ、それは、そうなんだけど…ね」
 すっかりC.C.の寝顔に興味を抱いている様子で、一向に腰を上げようとしないものだから、ルルーシュは更に激しく激昂した。
「デリカシーのない男だなッ、あんまりジロジロ眺めるなッ!」
 スザクは、あてつけがましく大きく息を吐き出すと、クルリと振り向き、半眼になって訊ねてくる。
「デリカシーのない男だね、自分だってジロジロ眺め回していたクセに?」
「ッば…、誰がッ!」
「ま、別にどっちでもいいけどね~。それにしても彼女、どうしてきみの前だと、こうも無防備なんだろう?」
「――知らんッ!」
 いいから、早くコッチに来い! と苛立たしげに大きな仕草で催促すると、しぶしぶルルーシュの隣に肩を並べてきたスザクが、チラリと横目でルルーシュの反応を愉しむように目を細めた。
「それともルルーシュって、案外、男として見られてなかったりする?」
「……………はあ?」
 一瞬ルルーシュは、なぜだか意識の片隅で、枢木神社の境内で騒々しく鳴き騒いでいるセミの合唱を、リアルに聞いたような錯覚に陥った。
 スザクはそんなルルーシュを眺めながら、なにやら納得した顔つきで頷くと、なぜだか露骨に慰めている仕草でポンポンとルルーシュの肩を叩いて、言った。
「この夏の間に、長年の宿題が片付けられるといいね、ルルーシュ?」
「――それは一体、どういう意味だ?」
「言葉通りの意味だけど?」
 言うだけ言って、満足したのだろう。
 既に話に興味を失くしているスザクは、スタスタとドアに向かって歩みを進めた。
「――おい、スザク!」
 肝心の用件を、まだ伝えてないだろう! とルルーシュが引き止めると、「ああ、そうそう」と思い出したように呟きながら、スザクが何食わぬ顔つきで振り向いた。
「C.C.が起きたら伝えてくれる? 頼まれてたピザ、届いてるから」
 じゃあね、とニッコリ微笑むと、スザクはさっさと部屋から出て行った。

 ――そんなもの、別に部屋に入ってくるまでもなく、済んでしまう用件だろう? とか、
 ――言葉通りの意味って、どういう意味なんだ? とか、
 ――どうして俺が、C.C.に異性を意識される必要があるんだ? とか、
 ――そもそも俺が、どうしておまえに慰められなければならない? とか、

 ルルーシュは目まぐるしく数多のことを同時に考えながら、なぜだか頭の片隅でワンワン鳴くセミの合唱を聴いていた。




[ 続く ]