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季節ネタ。 

ほんのりエロス。
苦手な方はユーターン・プリーズ♪






 焼き立てのピザをはふはふ言いながら美味しそうにむさぼっている。
 そんなC.C.の姿を横目で眺めながら、ルルーシュはげっそり溜息を吐き出した。
 現在の気温39.4度。
 言っておくが、公式に気象庁が発表している情報だ。
 たった今、ピザが焼き上がったばかりのキッチンは、軽く42度を越えているのではないだろうか?
 ―――人の体温で言ったら、致死熱だぞ?
 ―――それとも、何か? ひょっとして不老不死という身体は、温度まで常人と感じ方が違うのか?
 普段はクールで売っているつもりのルルーシュは、背中に、ひたいに尋常で無い量の汗を流しながら、やがて辛抱たまらずに、ぐったりキッチンカウンターに上半身を預けた。
「どうした、ルルーシュ? 腹が減りすぎて動けないのか?」
 そこにC.C.が、たちまち声音まで上機嫌でニコニコ微笑みながら、まったく状況を理解して無い様子で声を掛けてくる。
 声も無くうつ伏せに倒れ伏していたルルーシュは、喉の奥で軽く唸り声を上げながら、ゴロリと寝返りを打ちなおした。
 伏せている間に、自分の体温で蒸していた肌の上から水分が蒸発して、一瞬だけ涼しいと思ったが、重力に伴ってダラダラ背中側に汗が流れ落ちてくるものだから、いっそのことこのままキッチンのシンクに頭を突っ込んでしまいたいところだった。
 すこしでも涼みたい一心で、気だるげな動作で身に着けていたエプロンを外して、シャツのボタンを臍のすぐ上辺りまで外してしまう。
 その間ずっとC.C.が黙り込んでいるものだから、いぶかしんだルルーシュが横目で視線を向けると、自分の姿を凝視していたC.C.が、慌てた様子で視線を外すのがわかった。
「………なんだ?」
 正直言って、口を開くのも面倒だったが、C.C.の目元がほんのり赤らんでいるのが気になった。
 C.C.は、ぶっきらぼうに「別に?」と言ったきり、気まずげにもそもそピザに噛り付いている。
「なんだ? まさか、もう食べ飽きたのか?」
「バカか。私がピザを食べ飽きるわけ無いだろう?」
「だったら、いったい何なんだ? ハッキリ言えばいいだろう?」
 それから手にしていたピザを食べ終わるまで頑なに沈黙を守り続けていたC.C.は、横目で嫌そうにルルーシュの姿を眺めながら、「……おまえが急に、ストリップを始めるから、すこし驚いただけだ」と返した。
 ルルーシュは、一瞬言われた意味がわからずに、冷静に自分の姿を見下ろした。
 我ながら、しどけないポーズで無防備に寝転んでいたのに気付いて、二重の意味で赤くなる。
「……変態」
「なっ」
「男のストリップを見て赤くなるな」
「だっ…わっ…」
「それとも、サービス精神が足りなかったか?」
 言って、思わせぶりに腰のベルトに手を伸ばすと、C.C.は首筋まで真っ赤に染めながら、それでもルルーシュの姿を凝視した。
 軽い冗談のつもりだったルルーシュは、逆に引っ込みが付かなくなってしまって、激しい羞恥と困惑に襲われてしまったが。
「―――っわ、ルルーシュッ!」
「責任取れ。おまえが、俺をこんな身体にしたんだ」
 単純に、汗だくになった事実を思わせぶりに言い回すと、キッチンカウンターの上に組み伏せられているC.C.は、激赤するのに忙しくて、自分が隙だらけであるのに気付いていなかった。
 15分後、美味しく頂かれてしまったC.C.は、ぐったり仰臥しながら「暑い……」としみじみ吐き出した。
 ひと汗流して、逆にスッキリしていたルルーシュは、クスクス笑いながら言ってやる。
「子供用ので良かったら、一緒にプールに入るか?」
「……は?」
「会長がイベントで使ったのを確保しておいた。30分もあれば用意できるが?」
 C.C.はしばらく悩んでいた様子だったが、興味には抗いがたかったらしい。
 照れている口調でぶっきらぼうに「仕方が無いな」とそっけなく答えた。
 30分後、C.C.は上機嫌で子供用プールに浸かって、パシャパシャ水音を上げていたのだが、そのすぐ隣りで、ルルーシュはぐったり身を投げ出していた。
 空気入れが付属して無いのを失念していて、言い出した手前、責任を取らされて、直径90センチもあるビニル製のプールを自力で膨らませたのだから当然である。
「なァ、ルルーシュ?」
「…………………………………………………なんだ?」
 おかげで、45分前よりも汗だく状態のルルーシュは、正直言って口を開く元気も無かったのだが、それでも何とか訊き返すと、C.C.は「ふふっ」と幸福そうに笑った。
「なんだかんだ言って、おまえ、私に尽くすのが好きだろう?」
 ふざけるなとか、俺を一体なんだと思ってるんだとか、瞬時に無数の罵詈雑言が浮かんだが、プールの上に浮かべているゴム製のチーズ君と戯れている姿がなんだか無性に可愛くて。
「……そうだと言ったら、何か褒美をくれるのか?」
 真剣な口調と表情でそう訊ね返したら、C.C.は、さんざん照れて、赤くなった末に、ルルーシュを納得させる褒美を寄越した。
「女は得だな?」
「うっ、うるさいっ」
「ふん、仕方が無いから、晩飯のリクエストを聞いてやる。何が食べたい?」
 てっきり「ピザ」と答えるとばかり思っていたC.C.は、満面に笑顔を浮かべながら「流しそうめん」と答えた。
「…………は?」
 またもや一瞬、何を言われたのか理解できなかったルルーシュが渋面を刻むと、C.C.は露骨に軽蔑している視線を投げてきた。
「なんだ、おまえ、8年間も日本で暮らしていたクセに、流しそうめんも知らないのか?」
「誰がそんな時限の話をしている? どうして単純に『そうめん』ではなく、その上に『流し』が付くのか、理解できなかっただけだ」
 C.C.は、それはもう見事に鼻の先で笑った。
「決まっているだろう? 私が今、食べたいからだ」
 3時間45分後、ふたたびキッチンで虚脱していたルルーシュは、ニコニコ顔のC.C.に「早く流せ」とせがまれて、一口分のそうめんを1メートル45センチの高みから流した。
 そうめんを茹でるだけなら、ものの1分もあれば完了してしまったが、流すのに必要になる竹を入手するのに2時間要して、それを立体的に組み立てるのに1時間30分要してしまったのだ。
 その間ずっと、プールでただ遊んでいたC.C.は、流れてきたそうめんを嬉しそうに箸ですくい上げると、「やっぱりおまえ、私に尽くすのが好きだろう?」と幸福そうに笑いながら訊ねた。
 ルルーシュは、何も言わずに溜息を吐き出すと、手っ取り早く褒美を請求するためにC.C.の元に向かった。
 C.C.は珍しく焦りの色をあらわにして、食事中だの何だのと文句を言ってくれたが、
「黙れ魔女。いいから、さっさと寄越せ」
 大上段に構えて横柄に促すと、C.C.は、そこでもまたさんざん照れて、赤くなって見せた後で、ルルーシュの唇にチュッと可愛らしくキスを落とした。
「……こ、これでいいのか?」
 こんなキスの一つで、すべての労力が報われたような気分を味わえてしまうのだから、我ながら頭が沸いているなとは思ったが、実際問題、報われてしまうものは仕方が無い。
「そういうおまえはどうなんだ?」
 それでも、さすがに少しは自覚しているのだろう。
 本当に、これでいいのか? と珍しく自信なさげに見上げてくる金色の瞳に、少なからず意地悪心が湧いてきて。意識的に真顔でそう問いかけると、C.C.は途端に、怪訝そうに眉間に皺を刻んだ。
 彼女独特の上目遣いで。
「だから、おまえは俺に世話を焼かれて、どんなふうに感じているんだ?」
 C.C.は、露骨に目元を染めながら視線を外した。
「……わ、わざわざ聞かなくてもわかるだろう?」
「わからないから聞いている」
「呆れた鈍感だな」
「そうだとも。その鈍感に、ハッキリわかりやすいように説明してもらおうか?」
 顔から火が出る勢いで満面に朱を注いでいたC.C.は、やがて軽く溜息を吐き出すと、両手でルルーシュのシャツを掴んで、強引に引き寄せた耳元にぽそりとその言葉を囁いた。
 条件反射で吹き出してしまったルルーシュは、クスクスと止まらなくなってしまった笑いに肩を揺らしながら、恥ずかしさに声も出せなくなっているC.C.を、遠慮なく腕の中に抱きしめた。
 そして、唇を耳元に寄せて、「俺もだ」と小さく囁いた。
 C.C.は、さらに激しく全身を羞恥の色に染めながら、焦っている様子でルルーシュをグイグイ押し返す。
「暑苦しいから、あんまりくっつくなっ!」
「却下だ。あんなこと言われて、我慢できるか」
 30分後、狭いプールの中で強引に寛いでいるルルーシュの顎の下で、しみじみ溜息を漏らしたC.C.は、「で、この調子で、いつまで私の世話を焼いているつもりだ?」と訊ねた。
「おまえ、1ヶ月ぶりの休暇じゃなかったのか?」
 なんだ、気付いていたのかと、ルルーシュは苦笑した。
「だから、休暇を満喫しているだろう?」
 C.C.は、なんだか困っている様子で溜息を重ねる。
「……私が言うのもアレだがな、ちっともおまえ、休めて無いだろう?」
 本当に、おまえが言うのもアレだなと苦笑しつつ、ルルーシュは指先に緑の髪を絡めて、久方ぶりに接する感触を愉しげに味わい始めた。
「フン、おまえが自分で言ったんだろう? 最近ちっとも世話を焼く暇もなかったからな」
 ややあって、ルルーシュには理由の知れない吐息を軽く漏らしたC.C.は、気だるげに身を起こして、パシャリと水音を響かせながらプールを後にすると、ひたひたと足音を響かせながら隣の部屋に向かった。
 後にひとり取り残されてしまったルルーシュは、怪訝げに眉間に皺を寄せながら訊ねる。
「―――C.C.?」
 C.C.は、肩越しにドアの前で振り向くと、強気に美々しく微笑んだ。
「おまえの休暇も、残すところ3時間45分だ。私の世話を焼きたいのだろう? 徹底的に焼かせてやるから、たまには素直になれ」
 言うだけ言って隣室に姿を消してしまったC.C.の後姿を見送りながら、クスクス笑い出してしまったルルーシュは、「おまえ、このキッチンを誰が片付けると思っているんだ?」と呟きながら、ややあって素直に腰を上げると、C.C.の誘いに従った。



[ ende ]



子供用プールと、チーズ君、流しそうめん。
それだけを書きたかった話なので、オチがないですごめんなさい。
でもルルシーって、暑い暑い言いながら、汗まみれになって意地でもくっついていそうな気がする。