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STAGE 1.999 「未知との遭遇」 

頭にポッと浮かんだシーンを書き始めたら、止まらなくなってしまった…。

いずれはきっちり腰を据えて書きたいなァ~
と思ってる話の一つです。



良かったらどうぞ~♪
(*´ェ`*)


携帯やmacな方はコチラから。

それ以外の方は、下からどうぞ。





「ああ、どうにか無事に力は与えたさ」

 気だるげに呟きながら、地面に直接身体を横たえていた少女はムクリと上半身を起こした。
 無意識の仕草で長い緑の髪をかき上げると、後頭部を探った手のひらにべっとり血痕が付着したのに気づいて、少女は不快そうに金の瞳を鋭く細めた。
 その血痕の始末をしばらく逡巡した後に適当に服の袖で拭うと、いかにも面倒臭そうに吐息しながら独白を続けた。

「――効果? さァな、そんなものは私の知ったことではない。本体の私は完全に死んでいたんだからな」

 ――否。
 感覚的な部分で、少女はその感覚を知悉していた。



 ――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。おまえ達は――死ね。



 少年がそう命令を発すると、周りを取り囲んでいた軍人達が嬉々として自らを死に導いた。
 その亡骸が無造作に転がっている倉庫内。
 むせ返るような血の匂いが周囲に濃厚に充満していて、人間の死には関わり慣れている少女ですら、しばしの間不快の色を示して、金の瞳を細めながらその光景を見つめていた。
 が、それもつかの間、じきに少し怒っているような口調で独善的な告白を続けた。

「――はァ? ギアスの委譲に関して以外は、私の知ったことではない。それくらい承知の上で、私にあいつの存在を――おい、それよりおまえ、本当に構わないのか? 仮にも自分の息子を――はあ? だから、どうしてそういう話になる? ギアスを与えた以上、私はアレの成長を待ち、願いを叶えて貰うまでだ」

 矢継ぎ早に独白を発しながら、ややあって少女は疲れたような表情で立てた膝を腕の中に抱き寄せると、その上に、つい先ほど銃弾で打ち抜かれたばかりのひたいをギュッと無造作に押し当てた。
 クツリと空気が洩れる音が聞こえたのは、少女が喉の奥から乾いた笑い声を発したからだ。

「――ああ、いかにもおまえ達の息子らしいと思ったぞ。大した執着心だなァ、アレは。アレなら十二分に私の望みに耐えられるかもしれないぞ? 自分が生き長らえることを何より優先的に、何だって犠牲に出来るタイプさ。よっぽど私なんかより、不老不死の人生にふさわしい男かもしれないな」

 淡々と言葉を発するその響きとは全く以って反比例して、自分の膝をきつく抱擁している腕の力が次第に増していき、決して高価とは言いがたい拘束衣の布地が引き連れるような軋み音を上げていた。
 少女はそれにも構うことなく、クツクツと喉の奥で笑い声を発し続けている。

「――自分の息子が、ひょっとすると地獄に陥るかもしれないのに、よくもまァそうやって呑気に笑っていられるな。ひょっとして私がまた断念するとでも軽視しているのか? ――いいや、今の私以上に絶望を抱えた奴など居ないさ。こうなったら、あの男の生に対する執着を、心ゆくまで利用させてもらうだけさ。あの男の魂を一片たりとも逃すことなく、魔女の執念で生き地獄へと送り出してやる。結果的に私のコードが手に入るなら、おまえ達だって形式は別に構いはしないんだろう?」

 ついには縫製の甘い部分がビリリと裂ける音が辺りに響くが、少女はそれでも渾身の力で掴んだ指の力を緩めようとはしなかった。
 むしろ繊細な少女の爪の先が過剰な圧力に耐え切れず、中指と薬指の爪の先が横から裂けるように割れてしまうが、少女はそれすら意に介した様子もなく、無気力な独白を続けている。

「――まァ、いずれにせよ、後は結果を御覧じろさ。そろそろ私も逃げるぞ。そうそう何度も撃ち殺されてたまるものか。私にだって痛覚はあるんだからな。――アッシュフォード? ああ、アイツの住まいには、悪いがすぐには向かわない。おまえの言葉を信用しないわけではないんだが、しばらくの間は私だってあの男の適正を見極めるための時間を要するさ。そのうち、な。……まァ、適当に何とかする」

 言いながら少女は立ち上がると、面倒臭そうに服に纏い付いていた土ぼこりを払った。
 傷を負ってから、まださほど時間は経過していないはずだったが、折れたはずの爪はもう既に元の形へと整形されていた。
 少女は、いささか唐突にフンッと鼻を鳴らすと、先ほどまでとは少し違った冷笑を浮かべてクスリと微笑んだ。

「――おまえが言うな、マリアンヌ。契約不履行のクセして。……おまえであれ、誰であれ、契約以外でこの私を使役することなど許すつもりは無いからな。――シャルル? そうだな、アイツが私の願いを叶えてくれるのであれば、或いは……フッ、まァ、そう焦るな。『二兎を追うものは』と言うだろう? ひとまず今は、あの男の資質に賭けてみるだけさ。それから先のことは、――ああ、わかったから、今更四の五の言ってくれるな。言っただろう? もう既に時の歩みは進み始めてしまったんだからな。――さあ、あの男にとっては地獄の、私にとっては幸福の始まりだ」

 最後のそれだけは実に鮮やかな微笑を浮かべながら少女はそう宣言すると、臆したところの微塵も無い歩き方で無人の倉庫を後にした。



※ ※ ※




「……なんとも馬鹿馬鹿しい『魔女の宣誓』だな」
 腰丈の高い椅子に一人悠然と腰を下ろしながら、ルルーシュは無感動にポツリと呟いた。
 その呟きをふいに耳に入れたC.C.は、露骨に呆れた様子でルルーシュの背後に近づいた。
「しつこい男だな、同じシーンばかり眺めて。いい加減、嫌がらせにしか思えないぞ?」
 一瞬黙り込んでいたルルーシュは、チラリと横目で振り向くと、
「よくわかっているじゃないか」
 と、人の悪い表情で唇の端を歪めた。
「――いてっ」
「おまえがそのつもりなら、私だって同じ手段で反撃してやるまでだ」
 容赦なくルルーシュの後頭部に平手打ちをお見舞いしたC.C.は憤然と呟きながら、カッカッと靴音高く長い回廊の先に歩みを進めた。
 空中に無数の絵画が縫い止められている幻想的な空間――Cの世界。
 やがてC.C.が歩みを止めた先では、暗い洞窟の中で水音がぴちゃりと跳ねる音が響いていた。



「――やっと呼んでくれたね……私の名前――」



 洞窟の中に裸身を晒して横になっている少女。
 その少女の顔の上に屈み込んでいた少年が、茫然とした顔つきで腰を下ろし直すシーンが後には続いた。
 ルルーシュは、いかにも憮然とした表情でC.C.の後に続くと、ややあって無表情に自分を見上げるタチの悪い魔女の視線に耐えた。
 だが次にC.C.が口を開いたとき、その口調は思いのほかに真剣なものだった。
「なァ、ルルーシュ?」
「何だ?」
 そこで一度言葉を切ったC.C.は、また一度絵画のほうに視線を戻した。
 絵画の中では少年が、ためらいがちに血に濡れたハンカチを水たまりの中に投棄しているシーンが続いていた。
 そのシーンをしばらく無言で眺めていたC.C.は、やはり無表情に傍らに立つルルーシュの顔を見上げた。
「私なりに、いろいろ考えてみたんだがな。やっぱりどうしてもわからないんだ」
「何が?」
 答えながら、だがそれを言う男の口調は、『出来れば訊ねてくれるな』と言外に物語っていた。
 それを察せないほど浅い付き合いではなかったが、男の意思を無視するのに慣れていたC.C.は、構わず質問を続けた。
「どうしておまえ、私を人間扱いする気になったんだ? たかがこれしきの出来事で」
 端的に言ってしまうなら、たかだか本名を知ったことぐらいで。
 ルルーシュは、しばらく憮然と顔を顰めたまま、口を開く兆しすら見せようとしなかったが、いつになく真剣みを帯びているC.C.の瞳も、返事を急かすような真似はしなかった。
 ややあってルルーシュは、いかにもげんなりとしている様子で、当て付けのように大きくあきらめの息を吐き出した。
「――三日くれ。その間に、どうにか答えらしいものを考える」
 C.C.は、クスッと息が洩れるような笑い方をした。
「えらくまた真剣に考えてくれるんだな?」
 ルルーシュは、憮然とした表情のまま、それでも断固とした口調で切り返した。
「別におまえのためじゃない。下手な答え方をして、後になってアレコレ考え直すような真似を避けたいだけだ」
 C.C.は、きょとんとした表情で小首を傾げた。
「要するに、自分のためか?」
「ああ、俺はそういう男だ」
「今も昔も変わらずか?」
「そう言う事だ」
 言って、すげなくルルーシュは踵を返したが、C.C.は後を追おうとはしなかった。
 カツカツと快活に去り行く背中に向かって、C.C.はひそりと無感動に訊ねた。
「なァ、ルルーシュ?」
「何だ?」
「もしも私が死ななくて、おまえも窮地に立たされることなく現場から脱出することが叶っていたら、そのときおまえは私の処遇をどうした?」
 ルルーシュはぴたりと歩みを止めると、その場でしばらく黙考して、やがて肩越しに視線を返した。
「とりあえず、アッシュフォードに連れ帰っていたんじゃないのか?」
 何しろシンジュク・ゲットーを壊滅させるほどの危険人物なんだからな。とルルーシュは続けた。
「適当に放り出すつもりなら、最初から連れて逃げ回る必要もないだろう?」
「それから?」
「そうだな、適当に時機を見て、安全な場所に逃がしてやる方法でも模索してやっただろうさ」
 これにはC.C.のほうが、驚いている表情でぱちくりと大きな瞳を見開いた。
「正体不明の、いかにも身元の怪しい女に、そこまでしてやる必要があるのか?」
「だから言ったろう?」
 ルルーシュは答える。肩をすくめがちに。
「俺の心の平穏のためだ。せっかく死地を脱したのに、その後に俺の責任で死なせてしまったのでは後味が悪いだろう?」
 C.C.は無表情に小首を傾げると、不思議そうに訊ねた。
「なら、逃がしてやった後は」
「愚問だな。出会ったことすら、三日もしないうちに綺麗サッパリ忘れていただろうさ」
 C.C.はようやく納得したような表情でクスリと微笑む。
「なら、せいぜい三日を考え事に費やすんだな。『綺麗サッパリ忘れられなかった』場合の返答を」
 いかにも余裕たっぷりの表情でからかわれ、ルルーシュは「うるさい」と一言呟くと、それきり一度も振り向くことなく、無限に繋がる回廊の先に向かって歩みを進めた。



[ ende ]




二次創作に「逆行モノ」というジャンルがあるのを最近まで知らなくて、
ほくほくと喜びながら何作か拝見してみたんですが、
ルルシー視点で振り返ってみる逆行モノが見つからなくて、
いつかは自分で書いてみたいなァ~と一年半ほどまえからずっと思ってます(長い)。

それとはまた別に、いつかは書いてみたいなァ~と思っているのが、
今回のSSみたいな「Cの世界で過去を傍観」するようなお話。
きっと二人して一緒に眺めるようなことはしないと思うけど、
ルルーシュは一人で淡々と最初から最後まで眺め終わって、
フウッとひとつ嘆息して見せるだけで、C.C.には一言も言わない感じがしています。
そーゆー話を、一度じっくり読んでみたい。

ありがとうございました!