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キス色百景 SCENE.005 『つかの間の陶酔』 

2,000文字程度で、キスに関するシチュエーションを集めてみたいな短編集。

ウチのサイトの風呂ネタが、今現在13回と微妙な数字だったので、
意識的に風呂ネタを増やしてみました。
(*´ェ`*)


キス色百景・第二話 「比類のない経験」と、
キス色百景・第三話 「後生だからお願い」と、
キス色百景・第四話 「至上なる幸福の二時間半」の続きで、
管理人C.C.×白C.C.×黒C.C.×ルルーシュで混浴ネタです。

この設定で、[R-18] な展開にならないのが、むしろルルーシュクオリティ。
思い切り設定モエな話なので、どうぞ笑って見過ごしてくださいませ~♪
(*´ェ`*)


(追伸)
6/22にメルフォでお問い合わせくださった方へ:
「幸福のかたち(第二話)」も入ります……よね?(会話的に)
すっかり忘れておりました。

てなわけで、今現在当サイトにおける風呂ネタカウント15回。
(その気になれば、あと10本くらいは書けます)
(*´ェ`*)


携帯やmacな方はコチラから。

それ以外の方は、下からどうぞ。

キス色百景
* SCENE.005 : つかの間の陶酔 *


 ――――カポォォォォーン。


 モクモクと立つ白い湯気の向こう側。
 クスクスとさざめくように零れる女の笑い声が聞こえてくる。
 ルルーシュは、何とも言えない幸福な気持ちで、その光景を眺めていた。


 ――Cの世界で。

◇ ◇ ◇



「ここの管理人を務めてもう随分になるけれど、お風呂に入るのは何百年ぶりになるのかしら?」
 美しい緑の髪を頭頂部で結い上げて、うなじに後れ毛をほつれさせている管理人C.C.が、色っぽく首筋の辺りをタオルで拭いながら淡々と感想を洩らした。
 それを隣で聞いている白C.C.は、「はい!」と大きく頷きながら、まるきり子犬のような浮かれっぷりだ。
 それを反対側の隣で聞いている黒C.C.は、いったい何が不満なのかは知らないが、湯船の淵にエラそうに大きく開いた腕を預けて、高々と組んだ爪先を不機嫌そうにブンブン揺らしている。
Cの世界(ここに)留まっている限り、新陳代謝は関係ない体質とは言え、一緒に風呂に入っているほうの気分が悪くなるから、そういう物言いは止めにしてくれるか?」
 木で鼻をくくったような黒C.C.の言い方に、管理人C.C.は、ヌラリと光る冷え切った視線を隣に注いだ。
「それは、一体どういう意味なのかしら?」
「言葉通りの意味だろう? 何百年分の蓄積した垢とか、――フンッ、考えるだけでも身の毛がよだつ」
「そんなことないですよ!」
 意外なことに、少しだけ顔を赤くして口を挟んできたのは白C.C.だった。
「今さっき、(だい)姉さまの背中をお流ししましたけど、本当に綺麗なものでした。………それどころか、本当に大人っぽくて色気があって……羨ましいと思ってしまいましたもの」
「あらあら、『私』はまた嬉しいことを言ってくれるのね」
「ちがいます! 単なる本心です。……わたしはいつまで経っても、子供っぽさが抜けなくって」
「フンッ、見た目は完全に同じなんだから、単純に中身の問題じゃないのか? ――それよりおまえ、どうしてコイツが『大姉さま』なんだ?」
 管理人C.C.を間に挟んで、黒C.C.が嫌そうに問いかけると、白C.C.はニコニコッと太陽のように微笑みながらキャピキャピ答えた。
「なんとなくです! さァ、次は(ちー)姉さまの番ですよ!」
「っわ! ――バ、バカ、止めろっ! わ、わたしはっ…ぁっ、やっ…、っへ、変なところに触るなァ~ッ!!」
 問答無用で飛び掛ってきた白C.C.に、タオルで全身をこすられて。本気で嫌がる黒C.C.の、何だか妙に艶っぽい叫び声が天井の高い空間にこだました。
 まったくこの女は、どうしようもない奴だな――と対岸で頭を抱えるルルーシュの隣に、スルリと音もなく避難してきた管理人C.C.が肩を並べた。
「おひとついかが?」
「あ、どうも。いただきます」
 一辺が三メートルもある正方形の天然ヒノキ風呂。
 カフェテーブルの持込みが可能なら――と考えたルルーシュが、小型の発電機(ダイナモ)持参でCの世界にお礼参りに訪れたわけだった。
 その際、必要になる水は、一体どこから供給されているのだろう? とか、あんまり細かいことは考えちゃァいけない。
 妙なところでノリの良い管理人C.C.が、「混浴と言ったら、やっぱりコレでしょう?」と真顔で言って用意してくれたのが、丸盆の上に浮かべた徳利と杯のセットだった。
 中身はもちろん、熱燗にした日本酒である。
 こんなモノ、一体どこから? とルルーシュが訊ねると、暇な時にマリアンヌがせっせと足を運んで、コレクションしているうちの一本らしい。
「ツマミはやっぱり、あぶったイカが良いのかしら? お好みなら、ちょっと行って用意してくるけれど」
 ルルーシュは、鄭重に遠慮した。
 と言うよりも、あの母親は、Cの世界を別荘か何かと勘違いしているのではないだろうか? と考え始めると、頭の痛い気分だったが。
「ここの管理人を始めて、もう随分になるのか?」
 杯は二人分用意してあったので、なんとなく注しつ注されつしながらルルーシュは訊ねた。
 小さな杯に両手を添えて、クイっとゆっくり傾けた管理人C.C.が、コクッ、コクッと小さく喉を動かしながら嚥下して、酒の美味を満足そうに味わっているような息をハァとこぼした。
 白C.C.の言葉ではなかったが、三人いるC.C.のうちでも、この人がやっぱりダントツに色っぽい。
 普段はとにかく無表情の印象が強い人だったから、ちょっとした仕草に垣間見える感情表現が、見る者の目に動揺を誘うほど煽情的なのだ。
「そうね……」
 小声で呟き、少し遠い目をした管理人C.C.は、湯の温度にわずかに火照らせている横目でルルーシュに視線を注いで、クスリと息を洩らして微笑んだ。
「先代の管理人から引き継いで以来だから、もう随分になるけれど。ここで正確な年数を教えてしまうと、また『私』が大荒れしそうだから、無難に黙っておくことにするわ。残念だけど」
「フン、バレたか」
 そんなことを知って、何がしたいわけでもない。
 ただ、C.C.が一体何年くらい魔女の人生を歩んできたのか、雑談のついでに、試しに一度聞いておくのも悪い気がしなかっただけだ。
「いずれにせよ」
 管理人C.C.は、空いた杯にそれぞれ酒を注いで。
 早くも空になってしまった徳利を丸盆の上に返しながら、少しだけ面映そうに息音で微笑む。
「結構な贈り物のお礼に、あなたに媚を売りたいわけではないけれど。『私』はあなたに出会えて、本当に幸福だと思うわ」
「………そういうものかな?」
「ええ、だって御覧なさいな」
 言われてルルーシュは、素直に視線の先を巡らせた。
 キャーキャー歓声を上げながら、バシャンバシャンと水音を立てていた女ふたりは、いつの間にか攻守交代していた様子で。顔中を真っ赤に染めている黒C.C.が、クスクス笑い転げている白C.C.の背中をタオルでグイグイこすり上げている。
 あの女、一体何をあんなにムキになっているんだ? となかば本気で呆れていると、どうやら同じような感想を抱いていた様子の管理人C.C.が、実に珍しく愉しげにクスッと声に出して笑った。
「ね? 馬鹿みたいでしょう。まるで子供みたい」
 それを言う口調が、何とも言えず微笑ましいものだったので、少しだけ冷やかしたい気分になったルルーシュは、チラリと横目に管理人C.C.の姿を流し見る。
「他人事のように言ってないで、遠慮なく混ざってくれば良いだろう? 俺の所感では、結構かまわれるのが嫌いでなさそうだが」
 フフッと余裕の態度で目を細めた管理人C.C.は、こともなげに「遠慮しておくわ」と断った。
「『私』の邪魔をすると悪いから」
「――ん?」
 ルルーシュは、一瞬言われた意味がわからなかったが。
 答えは、対岸からバシャンバシャンと水音を派手に鳴らしながらやって来た。
「――ルルゥウーシュゥ~~~っ」
「さァ、お次は、ご主人さまの番ですよっ!」
「お、――おいっ、C.C.ッ! っちょ、ちょっと待てっ! こら、おまっ、ちょ…どこ触って…っ!!」
「観念しろッ、ルルーシュッ!!」
「観念してください、ご主人さまっ!!」
「いいから待てっ! 二人とも、ちょっと落ち着けっっ!! ぅわあああああああ~~~~~~っっ!!」
 身体の前後を白C.C.と黒C.C.に挟まれて、ほとんど抱きつかれているような格好で全身をタオルでゴシゴシこすられると言う、とっても羨ましい拷問にあっていたルルーシュは、しばらくの間全力で逃げ出すために悪戦苦闘していたのだが。
「――あ、死んだ」
「とか言ってる場合ですかっ! ご主人さまっ? ご主人さまっ?!」
 飲酒をしてから風呂に入るのは自殺行為である。
 だから無難に、風呂に入りながら飲酒を愉しんでいたわけだったが、直後に激しい運動をするのはもっと自殺行為である。
 一瞬で全身にアルコールが回って、頭に血が上ったルルーシュは、グッタリこと切れたように気絶した。



◇ ◇ ◇




「―――……ん、……」
 唇の上に感じるやわらかな感触。
 マシュマロとか、ゼリーとか、たっぷりホイップした生クリームとか。
 とにかく、やたらに甘いイメージの伴う感触に、夢うつつの状態で未練を感じたルルーシュは、すぐには逃さぬように相手の首筋に抱擁の腕を回した。
 唇の間から流し込まれてくる水の感触。
 それをコクリと嚥下して、「もっと寄越せ」とねだるような仕草で、相手の唇を甘噛みした。
 クスリと微笑んだ相手の唇も、まんざら悪くなさそうにルルーシュの唇を甘噛みし返してきて。
 そんな余裕があるのなら、遠慮なくその唇の甘さを味わい尽くしてやるまでだ――と今にもキスの角度を深めようとしていた刹那、突然足元付近で何かがガシャーンと割れる音がして、ルルーシュはまさに全身に冷や水を浴びせかけられた。
「――見損なったぞっ、ルルーシュっ!!」
 全身ずぶ濡れになってしまったルルーシュが、驚愕に目をパチパチッと忙しく瞬かせながら目を覚ますと、視線の先ではバスタオル一枚の格好のC.C.が、「実家に帰るっ!」と叫んで、一瞬でどこかに消えてしまった。
 いや、おまえの実家はCの世界(ここ)のはずだろう…? と変なところで冷静に突っ込んでいたルルーシュの頭上から、管理人C.C.が冷静に答えた。
「アリエスの離宮に向かったのじゃないかしら? Cの世界(ここ)からフリーパスのバイパスを一本用意してあるから」
 そこで初めて、管理人C.C.の膝の上に頭を預ける格好で、彼女の首筋に抱きついていたのに気づいたルルーシュは、気まずそうに顔を顰めながら腕を離した。
「――謀ったな?」
「さァ、何のことかしら?」
 涼しく答えてくれるが、その瞳の奥はどう見ても愉しそうに笑んでいた。
 思わず舌打ちしながら身体を起こすと、管理人C.C.は何食わぬ顔つきでフフッとサディスティックに目を細める。
「あなたが言ったのではなくって? これでも私は、かまわれるのが結構嫌いでないの。特に『私』が相手だと、本当に可愛くってたまらなくて」
「だからと言って、俺まで巻き込むことはないだろう?」
 どう考えても、アレは誤解した顔だ。
 目覚めた瞬間に辛うじて目に収めたC.C.の顔を彷彿としながら、ルルーシュは釈然としない気分で前髪をかき上げた。
 白C.C.と黒C.C.の入れ替わりには、ものの数秒で気づけたはずの自分が。どうして相手がC.C.でないことを見抜けなかったのか、正直意外な気がしたからだ。
 察したのだろう。こちらもバスタオル一枚の管理人C.C.が、しどけなく膝を崩している格好で鷹揚にクスリと微笑む。
「私はCの世界で記憶を管理する者。『私』が忘れてしまった記憶も含めて、全てを共有する関係にあるわけだから、あなたが誤解するのも無理のない話だと思うけど」
 ――やっぱりか。
 苦虫を噛み潰した顔をしたルルーシュは、ハァと溜息まじりに重い腰を持ち上げた。
「アイツはそれを?」
「承知しているはずよ。だからこそ、あなたが私に興味を抱くのが許せなかったみたいね。妬いたりなどして、困った子供だこと」
「そっくり同じセリフを、返してやりたい気分だがな」
 辛辣に言って、自分の分とC.C.の分の着替えを抱えたルルーシュは、きびすを返した。
 相変わらずルルーシュは、蜃気楼に騎乗して物理的に神根島まで移動しているのだ。
「待って」
 その背中を冷静に呼び止めた管理人C.C.は、五指を開いて手のひらを下にして、何の変哲もない床の内部から見覚えのある操作卓を呼び出した。
 わずかに湾曲した円卓。その上に管理人C.C.が手をかざすと、ルルーシュの立っている床の内部からまばゆい光の輪が発光し、幾重にも輝きながら空中に四散した。
「今ならV.V.がシャルルの書斎に居るから。物理的に移動するよりも、こちらのほうが早いはずよ。一刻を争いたい気分なのでしょう?」
 予想もしなかった彼女の親切に、軽く驚いた顔をしたルルーシュは、すぐにも思わせぶりに目を細めると、エラそうな態度でこう言った。
「仮に俺が、アンタのことも欲しいと言ったら、どうする?」
 管理人C.C.は、何食わぬ顔つきで肩をすくめた。
「困ったわね。私は、『私』にしか興味がないの」
 クックッと笑い出してしまったルルーシュは、「やっぱりアンタは、ライバルだったか」と愉しげに言いながら、光の渦の中に呑み込まれるようにして消えてしまった。
 腰にタオルを一枚巻いているだけの格好で。
 あの調子だと、十中八九、Cの世界に風呂まで増築してしまった事実を、マリアンヌに白状させられてしまうはずだから、しばらくはまた騒々しいことになりそうね――と思っていた矢先、ハアハアと息を切らしながら白C.C.が駆けてきた。
「――大姉さまっ! ……あれ? (ちー)姉さまと、ご主人さまは?」
 両腕に四人分の着替えを抱えて、きょろきょろと姿を探している白C.C.の頭を撫でながら、管理人C.C.は「すぐに戻ってくるはずよ」とあっさりあしらった。
「それよりも、お腹が空いた頃じゃない? ご希望なら、ホットケーキでも焼いてあげるけど」
 Cの世界に存在している以上、基本的に新陳代謝の機能は停止しているし、そもそも精神体である管理人C.C.に空腹の概念は存在しない。
 しかし、ここのところ頻繁に訪れている客人たちの影響で、メイドの真似事をするのが結構趣味なのだ。
 嬉しそうな顔をして振り向いた白C.C.は「はい!」と元気よく答えて、「一緒に手伝いますっ!」と満面に屈託のない笑みを浮かべた。
 元気な子供だ。
 コードなどに関係しなければ、あるいは人として全うな人生を歩み切ることも可能だったのかもしれない。
 そう思うだに、どうしたって複雑な気分は否めなくなってしまうが。
 だが、その場合、今度はルルーシュと出会うよりもずっと以前に、その人生を終えていたはずなのだ。
 何が正しくて、何が間違いであるかなど、一概に断言することは出来そうにないけれど。
「――今の『私』が、幸せそうに笑っているのが一番だわ」
「はい?」
 きょとんと見上げてくる白C.C.の頭を撫でて温容な笑みを浮かべた管理人C.C.は、
「せめて二人でゆっくり過ごしていられるうちに、腹ごしらえを済ませてしまいましょうかね」
 実に珍しく、惜しみのない笑顔をこぼしてそう言って、白C.C.をまたひとしきり幸福な気分で笑わせた。



[ ende ]
――「運命」と人は呼びたがる「未必の故意」