FC2ブログ
【2019年11月】 10月≪ 123456789101112131415161718192021222324252627282930≫12月

水彩画のような血 

水彩画のような血水彩画のような血
(1994/03)
フランソワーズ サガン

商品詳細を見る


映画監督のコンスタンチンはハリウッドで人気と栄誉を博していたが、一本の映画の失敗により名誉も財産も無くしてしまう。
絶望してしまった彼は、第二次大戦戦時下のナチ占領下のフランスに居場所を移した。
彼の作品のファンであるナチスの高官ゲッペルスの後ろ盾により、何不自由なく南仏プロヴァンスで撮影に熱中していた。
しかし、彼を捨てて去った妻のワンダと合流し、また彼の匿い子であり、愛人でもあるジプシーの青年ロマーノが彼の人生に複雑な影響を及ぼしていくのであったが……。


大好きなサガンのレビュー一冊目が、
こんなローテンションになってしまうとは大誤算。
しかしどうにもこの本は、私にはからっきし駄目でした。

まず、面白いと思い始めるまでに130ページも要してしまった。
けれども、途中すぐに中だるみ、コンスタンチンの妻であり、有名女優でもあるワンダが登場する160ページ過ぎでようやく盛り上がり、それでも身長:195センチ、体重:85kgの巨漢とも言えるコンスタンチンが終始ウジウジ女々しくて、そのくせ第二次大戦下のフランスで、すぐ隣の村ではユダヤ人が虐殺されているような場所で、暢気に(たいていは傲慢に)特にありがたみを感じることもなく漠然と映画を撮り続けている姿が許せない。
この小説を読み始めて、実際に第二次大戦時のフランスで撮影された「天井桟敷の人々」をすぐに彷彿としましたが、結局はあの映画ですら、ユダヤ人が大量に虐殺されていたのと同じ地続きの欧州で、それ以外の民族が愉しむための娯楽作品を撮影していたのかと思ったら、なんだか本気で吐き気がしてしまいました。
(映画の内容自体はものすごく大好きなんですが…。でも改めて客観的に考えてみると、やっぱり人道的におかしいことだし、許せない)

しかも、この小説はさらにもっと救いようがなく。
おそらく核兵器を発明したと思われる博士を匿って、イギリスの諜報部員であったワンダはフランスから出国するが、ワンダとコンスタンチンを逃がすために身を挺して時間稼ぎをしていたロマーノは、肩を砕かれ、背骨を砕かれ、二目と見られない状態までナチの将校に拷問を受けていた。
そこにロマーノを迎えに来たコンスタンチン。
その直前にナチスによる最寄の村の虐殺を目の当たりにしていたコンスタンチンは、今後の人生に絶望しか抱いていなかった。
迷いなく隠し持っていた拳銃でロマーノを射殺すると、その銃でみずからも自殺する。

サガンの幼少時代実際にフランスで目にしたらしいナチスドイツの暴行。
それを、サガンの美しい文章で目にすることが許せないのか、たったの一行も、ひとつの単語も救いが用意されていないから読後に激しく嫌悪感に絡め取られしまうのか、自分でも判断できないくらいに、ここまで読後に気分の悪くなってしまえる本を読んだのは初めての体験でありました。
いや、すこしだけ遠藤周作さんの「沈黙」や「海と毒薬」を読んだときの気分と似ているか。

現実世界にはもっともっと不条理で、許せない事実が蔓延しているのは知っているけれども、せめて最後に一筋だけでも救いの場所がほしかった。
結局サガンは何を一番描きたかったのか?
大戦中には、この本の中で描かれているような裏切りが、当たり前のように存在していたことを後世に残しておきたかったのか?
それともナチスドイツの悪事の暴露?
(その割には、そうしたシーンは数%の割合でしか出てこない)
地続きの場所で凄惨な戦争をしていながら、一方フランスの地方では戦争の存在などすっかり忘れ去られていたことの問題提言?
ただ単に「戦争は悪だ」と訴えたいだけなら、もっとずっとシンプルに「別のやり方だってあるだろう!!」と、読んでいてひたすらに疲れてしまう本でした。

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://ronsard3.blog29.fc2.com/tb.php/25-6ba5a5d1